陀々堂の鬼はしり

五條エリア

室町時代から続く、五條市の伝統行事「陀々堂の鬼はしり」。今年も1月14日に無事に終わりました。

今年で529回目を迎えたこの祭りは、国の重要無形民俗文化財に指定されています。

 

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「鬼はしり」とは、燃え盛る大松明(オオタイマツ)を持った父鬼(赤鬼)、母鬼(青鬼)、子鬼(茶鬼)の3匹がお寺の中を豪快に走り回り、住民の災厄を祓う行事。昼間は松明に火をつけないまま行い、夜は煌々と燃え上がる松明を掲げ、人々の幸せを祈ります。

鬼というと、悪者にとらわれがちですが、ここの鬼は「仏様の使い」。鬼役になった行者さんは、1週間、水垢離(水行)と別火精進(家族・他人とは別の火で作られた料理)で身を清め、当日を迎えます。

 

 

 

 

 

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午後4時から始まる昼の鬼はしりは、次世代の継承を願って始まった「子ども鬼はしり」や「ごく撒き」もあって、いつの間にか、たくさんの人が集まってきました。カタンカタンと木を打ちつける音が鳴り響くと、それに合わせるかのように太鼓や鐘、ほら貝も鳴り響きます。

しばらくすると、お堂正面の一番北側の戸口に父鬼が登場しました。重たそうな松明を左手に持ち、右手に持った斧を高く掲げ、ポーズを決めるその様は、まるで世の中の災厄をにらみつけているよう。そのまま、真ん中、南口の戸口へと移動し、3匹が揃います。夜には見えない松明のカタチや重量感を感じることができるのも昼の鬼はしりの醍醐味です。

 

 

 

 

1401_陀々堂の鬼走り

夜の鬼はしりは、「迎え松明」を持った火天(カッテ)役が、念仏寺近くのお寺にいる鬼を迎えに行くところから始まります。その炎に導かれ、山伏や僧侶、鬼が堂内に入り、その時を待ちます。僧侶の読経が始まると、火天役が堂内で燃え盛る松明で「水」という文字を書く、「火伏せ(ひぶせ)の行」を行い、この火祭りの安全を願います。

そのあと、いよいよ鬼の登場です。煌々と燃える松明は圧巻です。正面の3つの戸口を練り歩き、そこからは佐(スケ)役が肩に担ぎ、お堂の背面をぐるりと回る。その様は、まるで火が走っているようにみえ、そこから「鬼はしり」と呼ばれるようになったともいわれています。

熱さと重さをものともせず、人々の幸せを祈りつづけてきた鬼。その想いが、地域を守り、祭りを伝えてきたのかもしれません。

(文と写真 コミュニティライター 西久保智美)